しましま愚図羅の話B

20世紀最後の釣を・・・・天草下島、大江の磯に決定、何でも、情報によると、大きなグレが、食ってるらしい。
釣をやめ、夜のネオンから遠ざかり3年が過ぎようとしている
久しぶりに釣具の手入れ、磯バッグのジッパーも潮に絡まれ、頑なに、拒否しているかのようだ。仕事の合間に竿、小道具などを綺麗にふきあげ・・・・1匹のグレを釣りたいがためのワクワクする時間が楽しい
 天草諸島下島の大江港、ここには、有名な大江天主堂があり静かな山間の漁村に似つ食わない、白い壁が浮かび上がる、最近は天主堂周辺の整備も進み、遠方からの訪問者も見受けられる。
 磯の香りを知った場所が大江だった。朝の暗いうちから、地元の船に乗り、磯に降り立つ、船のライトに照らし出される磯は、未知なる黒くギザギザした地球を思わせた。磯に降りた瞬間の興奮・・・今も鮮明に私の頭の片隅で生き続けている。忘れることのないその磯の姿は、私に、遠方の磯や島をこの目で見てみろ・・と問い掛けてくる。
 ((「鬼ヶ島!!草垣群島の夜明け前の、切り立った、地球の姿は最も美しく、人を寄せつけない姿をしている、初めて訪れる人も、2度、3度目の人もその岩礁の姿を見ると身震いするだろう」・・・・鹿児島県の遥かな"離島"というよりも"岩礁"。))
 
 午前3時、大江港到着、二組の釣り人と私たちを乗せ船は出港、我々は地磯の離れの小さな磯に降りた。船長の指示を聞き、夜が明けるまでの4時間を真っ暗な磯の上で待たなければならない、携帯用のガスとランタンを取り出し灯を灯す。小さな磯と隣のカブリなどを確認し、寒い真冬の海と磯を感じつつ、夜明けまでの眠りにつくが、体の足先から寒さが、眠りを妨げる。

 このページを書いてる時(2日午前2時)、テレビのスウィッチを入れてみると、釣りをテーマにした映画が飛び込んできた、ブラット゛ビット??主演のリバー・ランス゛・スルーイットみたいだ。モンタナとフライフィッシュと若者のドラマは、この映画をセピア色に仕上げている。磯とはあまりにも趣が違いすぎるか・・・
 夜明け、寒さと戦いながら、仕掛けを作る。磯竿1.5号と道糸3号にハリスは2.5号・・釣り人は、釣る前から大きいのが、釣れると思っているのか、最初の仕掛けは夢の仕掛けになってしまう。
遠くに、天草西海岸のシンボルの小ヶ瀬と大ヶ瀬の姿が薄く夜明けに浮かんで見える。
 仕掛けは、できたけど、魚は釣れるだろうか・・・大江の磯釣り
しましま・・・天草・・・上潮がうまく沖に向かって流れてくれると、釣れそうであるが、思うように動いてくれない、母なる海は。 ビシャゴの離れのカブリの隣の磯((誰がつけたか磯の名前は、変な名前の磯が多い))で、
下手で根性のない私など、餌取りの姿でギブアップしてしまう。キタマクラに好かれたら、ほとんど竿を振らず、ただ、ひたすら焼酎との会話を楽しむ、足元のサラシの下で隠れて見えないグレも黒鯛も私の前には姿を見せてくれないのである。

 磯から天草の山なみなど観察し、海鳥が、私の撒いたコマセの帯に群がり、餌を拾っている。コマセで潮の流れも確認できるが・・・乾いたツマミを肴に、焼酎を召し上がる、真冬の海と孤独な磯で、寒さに負け、餌取りに負け、静かに眠ってしまう・・・・・・狭くゴツゴツした足元、疲れ果て、海に浮かぶ六畳ほどの磯で、14時間もの長い間、身動きできずにいる自分・・・・好きだから・・・磯の14時間であるが・・・寒い真冬の磯。

 彷徨いと閉塞・・・行き場も逃げ道もないない人間が彷徨い、入り口も出口も見つからず、今の姿をそのままに、""喜怒哀楽""など存在しない時代、携帯のメールに姿を変えた愚かな遊びを大人と子供が楽しむ。
閉塞しきった20世紀が過ぎ・・・・・
21世紀は?_・・・避けることのできない不気味な情報の氾濫・・・雑誌とテレビとパソコンは人々を操り始め、自分をコントロールできないでいる人間があふれている。
男も女も大した違いなく、仮面をかぶった人間どもが戯れる。
トカラ・・・・トカラ
アンクルトリスのおじさん、早く日本に帰ってきてくれぇー。

 疲れた・・・21世紀は、正月3日・・・・トカラ
トカラと人


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